夏に行った美術展の話をします。
MOA美術館「北斎 The Great Wave×Digital」
熱海にあるMOA美術館に行ってきました。
葛飾北斎の「富嶽三十六景」の全作品を展示、ほかにも喜多川歌麿や歌川広重など錚々たるメンバーの浮世絵が一堂に会していて、かなり見応えがありました。
低反射高透ガラスという、物や人が映り込まない特殊なガラスが使われており、作品との距離感はほぼゼロでした。手を伸ばしたら触れそうなくらい。
あとINFPに芸術はよく効くと改めて思いました。美術館に行った後のメンタルの調子が段違いに良かったです。
一通り見た感想
覚え書きも兼ねて、感想を箇条書きします。
•誰が袖図屏風(衣桁に綺麗な着物がいくつもかけられていて、持ち主はどんな美人か想像させる屏風)。すごく大きく描かれていて等身大かと思うサイズ。もしかしてバーチャルな美人体験を狙ってたりするのか。脱いだ後の着物と思うとなかなか生々しい。
•イケメン美女美女美女イケメン美女美女美女美女イケメン美女。人物画は歌舞伎役者と遊女の波状攻撃。美少女からお姉さんから美少年からイケオジまでよりどりみどり。
•歌舞伎役者の名入りうちわを持った美人画、推し活だ(菖蒲をもつ女図)。
•紫式部と清少納言と小野小町を今風の美人に置き換えたやつ、文ストやモンストのバイブスを感じる(雪月花図)。
•本来はおじさん二人組の故事を美少女二人に置き換えたやつ、文ストやモンストのバイブスを感じる(見立鉢の木)。
・「グッとくるシチュエーション」への飽くなき探究心がすごい。風呂釜に入る瞬間の女性の後ろ姿、恋文?を食い入るように読む美人のアップの顔、風雨の中を髪を濡らして必死に歩く美人のアップの顔。さりげなく肩を出したり足を出したり。この頃って風紀が乱れないように規制が厳しかったんだったか。F1のグルーブドタイヤみたいなものか。レギュレーションをきつくしたけどもっと早いマシン出ちゃったみたいな。縛りがキツい方が表現って冴える(入浴美人図、巫女人相十品・手紙を読む女、當世美人合・冨士詣の夕立)。
・流行のファッションをまとった男女の絵。二人で着物とアイテムの色を合わせてる。今で言うリンクコーデかな。オシャレ(磯田湖龍斎の男女図)。
・200年前の人々も今と変わらず、イケメンや美人が好きだし、流行も追うし、推し活もしていた
浮世絵とVtuber
この作品展を見るまで、「浮世絵の人物画ってデフォルメがかなり効いているのはなんで?みんな同じ系統の顔だし。」と疑問でした。規制が厳しかったのもあったみたいだけど、売れっ子作家がどんどん生まれているということはその表現が受けていたというわけで。受けてたの?これが?なぜやと。
思ったのが、イケメン美女のテンプレに添ったデフォルメ顔にすることで、見た人それぞれが脳内で理想の人物像に補完できるのが良かったんじゃないか。その方がリアルに描き込むより、より多くの人達のストライクゾーンに入って、売れる。描き分けは顔ではなく、髪型や着物の色や柄や帯の形や小物でつければOKと。
現代の2.5次元アイドルやVtuberに近しいと思いました。元になっているのはリアルな人間だけど、外見はイラストやそれを元にした3Dモデルですよね。
リアルな人間に比べて顔の情報量が少ないのが共通点であり肝。いかに余白を補完させるか。西洋画の印象派の考え方にも通じるのかもしれない。
富嶽三十六景がすごかった
富嶽三十六景は言わずもがな、本物を全種類見られて興奮しました。構図やら色合いやらセンスが凄まじい。三十六景の後に追加された裏富士シリーズっていうのが十景あるんですけど、作風が変わったのか、歌川広重の東海道五十三次みたいでした。発表された時期も同じだし意識してたのかな。
本物を初めて見たので、感動のままに凱風快晴を模写したけど難しかった。楽しかったけど。気が遠くなった。
これをモチーフにした映像作品、びじゅチューンでおなじみの井上涼さんの「忍者とHOKUSAI不動産」もとても良かったです。「ザパーンドプーンLOVE」で神奈川県沖浪裏をやってたけど、それとは全然違う切り口。発想がすごいなあ。EDMに合わせてノリノリで踊る北斎&お栄ちゃんがファンキーで何度でも観たくなりました。忍者かわいい。去年の作品がYoutubeに上がってるから、来年になったら再公開してくれるといいなあ。