「映画ドラえもん のび太の絵世界物語」を観てきました。
いつもだったら、ドラえもんの映画は公開終了してからアマプラで観ています。しかし今回はアートがテーマということで、ドラえもんだったらかなりのクオリティが期待できるだろうと映画館で観てきました。
結果めっちゃ観て良かったです。以下ネタバレちょっとと、映画に触発されてぐるぐる考えたことを書きます。
今回の映画はアートがテーマということで、「上手な絵とはなにか?いい絵とは何か?」という問いが繰り返し出てきました。図画工作の宿題で、自分の下手な絵にガッカリし、全然上手く描けないと嘆くのび太。ジャイアンとスネ夫も絵をめっちゃからかってくる。そこに、かつては画家を目指していたことがあるのび助パパが「上手く描こうとしなくてもいいんだけどなあ」と声をかけてくれます。しかし、のび太には上手でなくてもいいという意味がわからない。上手くなくても、下手でも「いい」と思える絵、それってどういう絵なのか?
その答えは作中にきっちり示されています。今回のゲストキャラ、13世紀のヨーロッパに生きる、絵描きのマイロのセリフです。
「下手でもいいから、大好きな友達とか大好きな家族とか、大好きだーっ!って思いながら描いてごらんよ」
下手でもモチーフに向ける愛があれば、いい絵は描ける!このセリフを受けて描いたのび太の絵が、本当にめっっっっっちゃいい絵でした。この映画=この絵、というくらい物語の核心をついていて、あまりにも良すぎて、のっきーは見た瞬間オンオン泣きました。上記のマイロのシーンと、のび太の描いた絵は公式Youtubeの予告編でも観られます。が、ストーリーの流れの中で観るとひときわ心に染みるので、ぜひ本編を観てほしいです。心のおもむくままに、好きなものを描けばいい、技術がなくても情熱があれば、その絵は必ず誰かの目を惹きつける。という説得力が凄まじかったです。「うわあ、自分も描こう。誰より下手とか上手いとか、そんなのはいい。描こう」とスーッと思えました。この先創作で行き詰まることがあったら、何度でもこの映画で心身に積もったヘドロを浄化しに来よう。
映画の最後、のび太の大好きが込められた絵を、のび助パパも目にします。それまでの冒険でいろいろあって、パパはそれがのび太の描いた絵と知らずに観るんですね。しかし、「描いた人の大好きな気持ちがすごく伝わってくるいい絵だよ。」と絶賛してくれるんです。親の欲目が入っていない、純粋ないち鑑賞者としての意見でそれが出たというのがグッとくるし、のび助パパが若い頃に画家を志して、道半ばで筆を折ったことがあるという過去、そういうのも上乗せしてまたも泣けました。最終決戦の激しいバトルでも熱い涙が流れたし、涙腺ぶっ壊れた。劇場のスクリーンで観られてほんとに良かった。
ストーリー以外にも、オープニングで名画とコラボしているドラえもん達や、絵描きのマイロが石の粉に卵黄を混ぜてテンペラ画を描いているシーンなど、お絵描き好きな人には刺さる演出が盛りだくさんでした。
映画の中で語られていた、上手い絵といい絵の違いについて、もう少し掘り下げて考えてみました。
絵の印象というのはデッサンの上手い下手、個性のあるなしでざっくり4つに分けられる。のではないか?ということで、上記のように図解してみました。
映画の冒頭ののび太の絵は、右下の「デッサン下手×個性なし」の部分です。形を正確にとらえられない、色を綺麗に載せられない、そもそも何を描いたらいいのかわからない、完全なる初心者です。
そんなのび太が目指したのが、右上の「デッサン上手×個性なし」のゾーンです。「正確無比に整った、誰もが一目で上手だなと思う絵」です。映画の中盤、のび太はまさにこのゾーンど真ん中の「きれいなパパ」を描きます。しかしその絵を観たパパには「うーん、上手く描こうとしなくていいんだけどなあ……」と不評です。万人向けで整っているが、作者のこだわりや情念が感じられない。今話題の生成AIが得意とする絵もこのゾーンです。
映画の終盤でのび太が描いた絵は、左下の「デッサン下手×個性あり」のゾーンです。形はガタガタで塗りもつたないけど、選んだモチーフ、線、色、全てに作者の気持ちがドンと載っている、唯一無二の個性のある絵。同じのび太が描いた絵でも、こちらの絵はパパの目に止まり、「気持ちのこもったいい絵だ」と絶賛されました。
左上の「デッサン上手×個性あり」はピカソのような、後世まで作品が残る芸術家のゾーンです。小さい頃から美術の英才教育を受けたピカソは、正確無比なデッサン力を土台に、誰も観たことのない表現技法「キュビズム」を生み出し、美術史にその名を轟かせました。技術×個性がカンストしている「上手くていい絵」。絵画つながりでピカソを例に出したけど、藤子・F・不二雄先生もまさにこのゾーンに入る方ですね。神の領域。こんな風になれたら楽しいだろうなあ。
そんな感じです。のび太のような「大好き!」が詰まった絵を描けるようになりたいと思いました。アドバイスひとつであそこまで描けるのび太の感性は凄まじい。あやとりや射撃の名手なので、興味を持ったことへのインプットとアウトプットが人並み外れてるタイプなんだろうな。アートっていいなあ。来年の映画は「海」がテーマらしいので、そちらも楽しみです。
映画のフィルムコミックが4月25日に出るみたいです。買う!映画がアマプラで公開されるまで、こっちを繰り返し読もうと思います。